地理情報システムを用いた北九州市の土地利用と公共交通の評価及び活用に関する研究
学生名:渡利 和之
研究テーマ:English
(日本語)
入学年月:2009.04
修了年月:2012.03
取得学位:博士(工学)
論文概要:本研究は、北九州市を対象に、地理情報システム(GIS)を活用して低・未利用地の利活用計画および公共交通システムの改善に向けた提案を行い、その有効性を検証することを目的としている。本研究は、都市の再生や地域の活性化を通じて持続可能で魅力的な地域社会の構築に寄与する新たなアプローチを示すものである。
第1章では、本研究の背景と目的を明らかにし、土地利用の変化や公共交通網の現状、GISを用いた解析手法の必要性について述べた。特に、土地利用の効率化と地域住民の利便性向上に関する課題に焦点を当てている。
第2章では、GISを活用した低・未利用地の現状分析を行い、施設立地可能条件の判定や周辺地域特性の評価を実施した。また、住民アンケート調査を通じて地域住環境に関する課題を把握し、それを基に地域特性に適した施設導入案を検討した。さらに、意思決定を支援するロジックを構築し、低・未利用地活用の具体的な提案を行った。
第3章では、準工業地域を対象にGISデータベースを構築し、時系列データを用いた土地利用変遷の分析を行った。具体的には、GISデジタル地図データを重ね合わせて整理し、三角座標分析法を用いて準工業地域の特性や分布状況を明らかにした。また、近代日本の都市計画の変遷や現状についてもまとめ、準工業地域における土地利用の傾向を解明した。
第4章では、第2章で構築した意思決定ロジックの有効性を実証するため、事例を用いた分析を行った。GISを活用することで施設立地条件や地域特性を容易に把握できることを示し、地域住民のニーズに応じた低・未利用地の利活用の可能性を提案した。さらに、このロジックは都市開発や土地利用計画の策定にも適用可能であることを示した。
第5章では、北九州市の準工業地域を対象に、内部および隣接地区の土地利用状況を類型化し、特徴を分析した。また、関連する法律や都市計画政策の変遷を評価し、今後の土地利用規制のあり方について検討した。準工業地域における土地利用の最適化に向けた具体的な方向性を示した。
第6章では、GISを用いた公共交通評価法を基に、交通空白地帯に対応した循環型コミュニティバスの導入可能性を検討した。住宅地と市街地を結ぶ細街路を中心に短距離・少量多頻度輸送を重視した運行モデルを提案し、30分から60分の運行ルート案を策定した。また、高齢者や障害者を含むすべての利用者にとって快適なモビリティを提供する仕組みを提案した。
第7章では、本研究の結論と展望を示し、GISを用いた解析手法が土地利用の改善や都市計画、さらには公共交通の効率化にどのように貢献するかについて述べた。本研究の成果は、今後の都市開発における土地利用と交通計画の両面で大きな貢献が期待されるものである。