住宅の電力消費の影響要素分析及び分散型エネルギーの導入効果に関する研究
学生名:盧 韻琴
研究テーマ:Sensitivity Analysis of Residential Electricity Consumption and the Effect of Introducing Distributed Energy
(住宅の電力消費の影響要素分析及び分散型エネルギーの導入効果に関する研究)
入学年月:2015.04
修了年月:2022.09
取得学位:博士(工学)
論文概要: 近年、環境問題や都市化問題に対して、持続可能な低炭素都市の取り組みが活発している。住宅部門においては、エネルギー消費実態の把握、エネルギー消費に影響する要素の究明が重要になってきている。また、住宅の CO2 排出量の削減や電力のピークカットのため、住宅に高効率な分散型エネルギーの導入も増えている。
本論文ではスマートコミュニティにある住宅の電力消費量と世帯属性に関する実測やアンケート調査を行い、電力消費量の影響要素と電力ダイナミックプライシング(変動価格)実施時の効果を明らかにする。また、住宅に分散型エネルギーを導入する時の効果について、実測とシミュレーションにより、環境性と経済性要因を分析し、今後の環境モデル都市づくりにおける新たな取り組みと省エネ事業に貢献することを目的とする。
本論文は、以下の 7 章で構成されている。
第 1 章では、まず、持続可能な低炭素都市の取り組みとして、スマートコミュニティ発展、オール電化の普及、分散型エネルギー導入などの背景を述べる。次に、本研究の目的「エネルギー消費の影響要素と分散型エネルギー導入の効果を解明し、省エネ事業と新たな取り組みに貢献する」を述べる。最後に既往研究と各章概要と位置づけを説明する。
第 2 章では、各章の研究に用いた研究方法について説明する。
第 3 章では、スマートコミュニティ住宅の電力消費の影響要素とダイナミックプライシン実施時の効果を解明するために、デマンドレスポンス実証(ダイナミックプライシング=DP)に合わせ、対象住宅を実証の有無により、グループ A、B に分け、住宅属性、世帯属性及び電気設備導入状況等、住戸のエネルギー消費構造に影響する可能性がある特徴因子を把握するため、アンケート調査を行う。その後アンケート調査結果と DP 実施時のスマートメーターによる年間電力消費量の集計を行い、住宅及び世帯属性と DP 実施時のエネルギー消費の関連性に関する単変量解析と階層的クラスター分析を行う。本研究では、各影響因子をグレードごとに数値に変換し、変数とし、ウォード法で、統計処理ソフトウェア SPSS を用い、分析を行う。結果として、ダイナミックプライシングを実施することは住民たちの電気設備使用の習慣に影響を与えることが明らかにした。家庭属性因子の中、延床面積、世帯人数、世帯主の年収、エアコンの保有台数がエネルギー消費量に影響することが分かった。階層的クラスター分析により、ダイナミックプライシングの実施は「高齢型」属性パターンに影響を与えなかったことが分かった。
第 4 章では、より詳細の時間帯別、用途別の電力消費状況を把握するため、第 3 章と同全電化集合住宅の 13 世帯を対象に実測調査を行う。実測では、夏季、中間期、冬期に分け、エネルギー計測システムを各世帯の分電盤に取り付けて測定する。集計したデータを用い、データベースを構築し、日時別と時刻別の各用途のエネルギー消費特徴を分析する。さらに、実測データを平均化し、各用途の平均日電力消費量を変数として、SPSS を用いて、ウォード法のユークリッド平方距離により、階層的クラスター分析を行い、類似世帯の特徴を把握する。また、属性に関するアンケート調査と実測調査の結果に基づき、「世帯属性」、「季節による変動」、「各用途の電力消費」、「在宅率の検討 ・在宅率による電力消費量への影響」といった 4 つの視点から電力消費量に及ぼす影響要因の分析を行い。相関分析と回帰分析により、用途と日電力消費量の関係や在宅割合が日電力消費量に与える影響を検討する。結果として、対象オール電化住宅において、エコキュートによる電力消費が世帯の電力消費量に最も強い影響を与えていることが分かった。季節による電力消費量の変化についても、冬期におけるエコキュートが最も顕著であった。それで、冬期における給湯の使い方を見直すことが、全電化集合住宅の省エネルギー化に繋がると分かった。また、在宅率が高い日ほど、電力消費量が大きくなる傾向を示すことを分かった。
第 5 章では、住宅に太陽光電池、ガス燃料電池、水素燃料電池の 3 種類の分散型エネルギーシステムを導入時の経済性を考慮した年間コスト及び最適容量を検討するため、計算モデルを構築し、従来エネルギーシステムに 3 種類の分散型エネルギーをそれぞれ導入したケースを設定し、解析ツールの GAMS でシミュレーションを行う。その中、電力料金、売電価格、炭素税、ガス料金、水素価格等の影響要因を挙げ、変動した時にどの程度の影響を与えるか検討する。結果として、年間コストにおいて、太陽光電池の導入容量が多ければ、年間コストが下がる。ガス燃料電池と水素燃料電池は導入容量が多ければ、年間コストが上がる。最適導入容量の検討において、太陽光電池の導入については、現行電力、売電価格では経済性はある。ガス燃料電池と水素燃料電池は現段階経済性がないことが分かった。
第 6 章では、太陽光発電と燃料電池の併用住宅の HEMS データを入手、その設備性能、稼働状況や電力需要を分析する。これをもとに電力自給率、エネルギーシステムの季節負荷の需給関係を把握する上、分散型エネルギーの活動パターンと併用システムの経済性と環境性を検討する。結果として、対象住宅の電力自給率が高く、また、発電設備の稼働パターンおよび電力負荷との相関が大きいであることがわかった。燃料電池は 12 月において電力需要の平準化に貢献できると確認した。併用システムの環境性と経済性が確認できた。
第 7 章では、本研究の結論と今後の課題をまとめる。